2010年12月24日金曜日

塾も業界再編の波

 塾や予備校など教育産業の世界で、業界再編が進んでいる。従来の「塾は小、中、高生、予備校は浪人生中心」という垣根は崩れ、大手グループへの系列化が加速。少子化傾向に歯止めがかからないことを背景に生き残りをかけた合従連衡が続きそうだ。 

◇小学生から浪人まで

「はい、この単語の意味は?」。大手予備校、代々木ゼミナールの施設を利用した東京・代々木の教室で、塾大手「サピックス」の講師が教べんをとる。20人以内の少人数でテンポのよい授業。代ゼミとサピックスが共同で9月に開設した「Y-SAPIX東大館」だ。

サピックスの少人数教育は、大教室主体の代ゼミにはないノウハウ。教室の傍らでは、代ゼミの講師が、熱心にメモを取っていた。

代ゼミは昨年9月、サピックスの中学・高校部を買収。今年5月には小学部も買収し、中学受験から大学受験までの一貫体制を整えた。「浪人生が激減し、対象学年を下に広げるしかない」。代ゼミを運営する高宮学園の高宮敏郎副理事長は、そう説明する。

代ゼミは来年3月、「Y-SAPIX」を都市部を中心に49カ所開設し、「現役」の中・高生部門を強化する。高宮副理事長は「大手の予備校、塾の創業世代が引退時期を迎え、後継者難から身売り話の持ち込みが多い。買収価格も最近下落傾向」と明かす。

教育産業界では、「予備校-塾」を中心に業態を越えた買収、提携が相次いでいる。大手予備校の河合塾は08年1月、大手塾の「日能研」と合弁で東海地区 に「日能研東海」を設立、中学・高校受験に参入した。予備校「東進ハイスクール」を運営するナガセは、06年に中学受験で定評のある塾「四谷大塚」を完全 子会社化。通信教育「進研ゼミ」を展開するベネッセコーポレーションは07年、塾大手「東京個別指導学院」を子会社化した。

◇教材・施設経費増え

買収合戦に発展することもある。塾の「佐鳴予備校」を運営する「さなる」は今年9月、予備校「栄光ゼミナール」を運営する「栄光」との資本・業務提携を 発表。しかし、「栄光」には通信教育「Z会」を運営する増進会出版も出資しており、筆頭株主の座を争っている。一方で栄光は来年からの小学校英語義務化な どに備え、今年秋、「シェーン英会話」を買収。「市進学院」を運営する「市進ホールディングス」も、学研ホールディングスなどに映像中継授業や教材を提供 するなど、広いジャンルでの提携も相次ぐ。

買収・提携が続く背景には、施設運営コストの増大がある。保護者の安全管理、防犯意識の高まりで、教室にICカード入退室システムなどを導入する塾が急増。著作権などの関係で独自教材の製作コストもかさむようになっており、中小の塾にとって大きな負担になっている。

ただ、学習塾などの動向に詳しい「月刊私塾界」の小松敦子編集長は「規模を拡大しても、指導内容などサービス満足度を上げないと支持を得られない。きめ細かなサービスをすれば小規模でも生き残る道はある」と話している。

◇子ども手当、追い風だが…

矢野経済研究所によると、09年度の学習塾・予備校の市場規模は前年度比240億円減の9000億円。10年度は子ども手当の支給などが追い風で、 9300億円と8年ぶりに増加に転じる見込みだ。しかし、18歳人口は92年の約205万人をピークに減少し、09年は121万人。10年度の学校基本調 査では、小学校の児童数は29年連続で過去最低を更新し、中学校の生徒数も過去最低だ。

また、07年の小学生の通塾率は25・9%と93年から2・3ポイント上昇したものの、中学生の通塾率は53・5%と6ポイント減少。「塾ブームのピークは過ぎた」との見方もある。

経済産業省の調査でも、学習塾受講生数はリーマン・ショック以降ほぼ横ばいだったが、子ども手当支給開始直前の今年5月から6カ月連続で増加した。ただ、「収益が悪化している塾などが多い」(業界関係者)といい、再編の流れは変わらないと見られている。

子供の数の減少に歯止めがかからない昨今、学習塾市場が縮小するのは当然です。どこに活路を見出すのか、業界のこれからの動向に注目です。それにしても、少子化で、 いいことなんてひとつもないですね・・・。

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